【書評】こうして僕は健康を極めました『人生が変わる神レシピ

 皆さんは、普段どのように食事をしているだろうか?コンビニでおにぎりを買ったり、パンを買ったり、自販機でスポーツドリンクやを買う、という人もいるのではないだろうか?実は、そのような日々の積み重ねが、生活習慣病メタボリックシンドローム、肥満などを引き起こしており、メンタルにも関係しているのだ。更に、仕事や勉強にも影響している。なので、食事は思ったよりも僕らの生活に直結している。「そんなことわかってるよ」というコメントが飛んでくるかもしれない。では、質問だ。どのような点で「分かっている」と言えるのだろうか?若い人は、「自分は若いから大丈夫」なんて思っている人も多いだろう。では、かなりお腹が出て肥満気味の人は、どのように過ごしたら、むしろあんな体形になるのだろうか?と考えると、他人事ではない、と思う人もいるだろう。本書は、そんな若い人にこそ読んで実践してほしい本だ。では、どのように有益なのか。これから紹介していこう。

 

 まず第一に、「レシピ」とあるが、文字通りの「レシピ」は、何と本の終盤らへんにあるのだ。では、本の大半は何について書かれているのかというと、栄養素の解説、である。あんがい、栄養素のついては知らない人が多い。例えば、皆さんはよく「魚を頭がよくなる」という歌を聞いたことがあるだろう。では、その背景には、どのような理由があるのか、ご存じだろうか?では、お肉は?肉料理は太る、なんてイメージがあるかもしれないが、実は調理の仕方に問題があるとしたら?言い換えれば、調理の仕方によって、太らなくなったりかえって若返ったり、ということがあるとしたら?そう考えてみると、気になってくるだろう。そのくらい、実はみんな疎いのだ。そのことを教えてくれるのが、本書の面白いところの一つだ。

 

 では、最も面白いのは、どのような内容だろうか?それは、太りそうだと言われているものが実は太りにくい、というケースが書かれていることだ。例えば、ダークチョコレートがある。チョコレートと聞くと、太りそうなイメージがあるが、この本を読む限り、実はそうではないのだ。なぜかというと、カカオが80%以上のチョコレートは、ポリフェノールを多く含んでいるため、心疾患を防ぐ、といったメリットが確認されているからだ。チョコ好きには、たまらない結果だろう。僕も、ダークチョコレートはちょこちょこ食べている。ちなみに、食べすぎ注意だ。

 

 本書は、メンタリストDaiGoさんと、DaiGoさんの専属シェフであるつっしーさんが書いた本だ。つっしーさんは、論文をもとに料理を解説し、実際に作る、というニコニコチャンネルを開設している。これに従って料理を作り、食べ続けると、かなり健康的なメリットがある。栄養や健康が気になる人は、つっしーさんのチャンネルを見るのがおすすめだ。

 

 繰り返すが、健康は、僕らの生活の根幹をなすものだ。いくら勉強が好きでも、体を壊してしまえば、その好きなこともできなくなる。しかも、年々、徐々に、だ。なので、食事を変えることで人生を変えることができる。なので、この本は、かなり価値がある。

 

参考文献

メンタリストDaiGo、つっしー(2022)『人生が変わる 神レシピ』repicbook

【書評】こうして僕は「コミュ障」を脱却しました。『コミュ障でも5分で増やせる超人脈術』

 皆さんは、会話が得意だろうか?得意だとして、どのように「得意」なのだろうか?

 告白する。実は、僕はコミュニケージョンが大の苦手だ。HIUの交流会やイベントに時々参加しているし、よく人に知識を解説しているので、他の人からは「話すのうまいですね」と言われる。しかし、内心は「そうだといいんだけど」とどぎまぎしている自分もいる。実際には、仕事で高めた説明スキルを、会話にも使っているだけなのだ。僕はもともと話すのが苦手な性格なのだが、そんな僕の助けになった本が、本書である。この本は、「コミュ障気味で」「話すの苦手なんです」という人にはぜひ読んでもらいたい一冊だ。何故今本がここまで画期的なのか、今から書いていく。

 

 まず第一に、心理学者の研究を紹介し、「内向的な性格」を定義し直している点だ。良く世間で言われている「内向的」というのは、「しゃべるのが下手」で、「とても根暗」で、「オタクっぽい」、というイメージではないだろうか?実は、そこに大きな誤解が含まれている。何かというと、この本によれば、実は内向的な人のほうがコミュニケーション能力が高いのだ。なぜかというと、内向的な人の方が観察能力に優れ、共感力が高いという。つまり、相手のことをよく見ているが故に、対人関係に不安を持っているだけ、ということなのだ。これを見て僕は、とても救われた。何故なら、僕自身コミュニケーションで困っていたからだ。相手の表情を見たり周りを見て分析したりして、頭の中で話を構築しているので、言葉の切り返しに時間がかかったり、自分の話の矛盾点を簡単に見つけて修正したりしている。とにかく、コミュニケーションでかなり疲れてしまうのだ。その点も含めて、この本で内向的を再定義してくれたことは、かなり救いだった。

 

 そして、第二に、この本では「自分の性格に合わせて、ネットワーキングを作りましょう」というのを推している点だ。これもかなり役に立っている。世の中は、外向的な人の方が好ましいというメッセージであふれかえっている。もっと人間関係を作って、みんなとつながろう、というものだ。しかし、僕はこの考えに疑問も持っていた。「そんなにつながったら疲れちゃうのに、何で人脈作りがいいんだろう」、という疑問だ。しかし、本書はその疑問にも答えてくれている。それが「自分の持ち前の性格に合わせた方法で人間関係を作りましょう」だ。価値観と照らし合わせてもいい。つまり、自分にとってやしやすいスタイルでコミュニケーションをしましょう、というものだ。ネットワーキング作りが苦手なら、人とつながることがやたらと上手い何人かと友達になり、いざというときに他の人とつなげてもらう体制を作ってしまうのだ。これなら、あまり人間関係が得意でない人でも、ネットワーキングを作れる。まさに「無理せず」なのだ。僕のやりやすいコミュニケーションのスタイルは、「知識や分析、考察や考察、アイデアが飛び交う会話」だ。

 

 本書の著者は、メンタリストDaiGoさんである。堀江貴文さんとも交流があり、自身のサービス「Dラボ」で精力的に配信している。僕もDラボを使って、毎日勉強している。彼から得られる知識で、僕は人生を変えてきた。人生の基盤を作るのにはぴったりのサービスだ。最近はX-mobileとコラボし、スマートWi-Fiも出している。

 

 本書は、「コミュニケーションが苦手」と考えている人に是非とも読んでほしい本だ。内向的な人の助けになるし、コミュニケーションの見方も変わる。ぜひ、本書の知識を試してみてはいかがだろうか?

 

参考文献

メンタリストDaiGo(2019~2020)『コミュ障でも5分で増やせる超人脈術』マキノ出版

 

【書評】こうして僕は数学のとりこになりました『東大の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』

数学を、皆さんはどのようにとらえているのだろうか?恐らくつまずいたという人が多いだろう。何を隠そう、僕も数学につまずいた人間の一人なのだ。小学校の頃は、算数の学力テストで94点を取ったこともあったが、中学に入ってかなりつまずいた。膨大な量の問題と、一気に複雑となった概念。そして、一定の速度で進むカリキュラム、部活で疲れすぎ勉強に回す余力も残っていなかった。そして、長らく数学を放棄してきた。だが、この本を書店で見つけて、人生が変わった。そこで今回は、「数学がいかに魅力的で、かつ人生において重要か」を熱弁した本を紹介しよう。

 

 まず、この本で面白いのは、軽く数学史から振れている点である。例えば、「-(マイナス)が何で生まれたの?」とか「そもそも数学って何で生まれたの?」といった点である。つまり、この本がうまいのが、まず読者の「何故」に、好奇心をかき立てるように答えている点だ。僕は塾の講師をしているが、この本の内容を何度も授業で話している。そのくらい、この本は、数学アレルギーの人におすすめの本なのだ。そもそも、「数学は『誰が見ても明らかな客観的な指標を示すために生まれた』学問」であるという、根本から解説している本である。例えば、カーナビが「この先ちょっと行ったら右」なんて案内したら、どうなるだろうか?「いや、ちょっとってどのくらいだよ!」とツッコミを入れたくなるだろう。つまり、数字を含めた数学があるから、僕らの生活を支えてくれているのだ。それを教えてくれるからこそ、この本は読む価値がある。

 

 そして、もっともこの本が面白いのは、何と中学のカリキュラムをほとんどバッサリカットしているのだ。そして、「中学の数学で本当に大切なのはこれとこれとこれ!」と言う形で解説しているのが、実に見事なのだ。つまり、中学校のカリキュラムは中学生を「これどこに向かってるの?」と迷子にさせるので、すっきりさせる必要があるよね、という理論の下、構築された本なのだ。実に考えられた本である。だからこそ、この本は一読する価値があるのだ。なので、この本を読むと、数学は案外役に立つし、面白い学問なのだ、ということが伝わってくる。僕は、この本を何度も読み直している。

 

 この本の著者である西成活裕は、東京大学にある先端科学技術研究センターの教授であるが、かなり面白いことをしている。何と、「何で渋滞が起きるの?」というのを数学で研究する「渋滞学」を作った人なのだ。つまり、渋滞を公式化しようと試みている先生だ。更に、高校数学でやる「微積分」の概念を、小学生に理解させている。この先生は、ホリエモンチャンネルにも出演している。ぜひとも、一度見ることをお勧めする。

 

 僕はこの本をきっけに数学を学び直そうと決め、今では趣味でチャート式の数学の問題を解いている。塾では、数学も教えている。数学が苦手な人でもここまでなれるのだ。その出発点となる本だ。ぜひとも、数学でつまずいた人は、この本を読んでみてはいかがだろうか?

 

参考文献

西成活裕・郷和貴(2019)『数学の先生!文系の私に超わかりやすく数学を教えてください!』かんき出版

【書評】何故「障害」なんて言われるの!?『発達障害の人には世界がどう見えているのか』

 皆さんは「発達障害」について、どのようなイメージを持っているだろうか?最近、何かと「発達障害」が何かと話題になっている。いつだかの24時間テレビでも自閉スペクトラム症(ASD)が取り上げられ、書店でも「発達障害系」の本が並んでいる。テレビ番組といい、書籍といい、中身を見てみると、どうやら彼らには、強みと弱みの差が大きいだけで、驚くほどの才能を持っていることが見受けられる。言い換えれば、一昔前には「発達障害の人はこういうことができないよね」「この部分で苦労するよね」となっていたが、最近の流れは逆なのだ。「こういう部分は苦手だけど、逆にこの部分はかなり得意よね」ということが、身近に起きている。なので、最近は「自分を受け入れましょう」という形になりつつある。というか、それ以前に、「障害ではなく、一種の性格の凸凹」という見方も出てきている。僕自身、どちらかというと、今まで「発達障害」と言われてきた特性をいくつか持っているが、そのような特性を持っているから得意なこともある。この本を読んで、自分の特性について理解が深まった。今回は、どのような部分が役に立ったのか、面白かったのか、ということを紹介していく。

 

 まず、この本で最初に取り上げているのが、「発達障害」への理解である。特に「困っていること」だ。この世の中の尺度から行くと、「発達特性」は不利になりやすい。コミュニケーションやその行動の異質性から、仲間外れにされやすいのだ。なので、この本では、その特性を持っていることで、どのようなことに困ってるのかを、紹介している。そのなかで、僕も筆者も口を大にして言いたいのが、「性格に問題で片づけられることが非常に多い。しかし実際は脳や遺伝子のレベルなので、直そうと思っても周りも自分自身も苦労しか待っていない」ということだ。例えばASDを持っている人は、コミュニケーションで問題を特に抱える。共感するという概念自体が少ないため、一方的になりやすい。僕も、脳の構造はASDと診断される人と同じと医者から言われたことがある。これらのことを含めて、筆者がここで強調しているのが、「何故」を深掘りし、理解していくことが重要だ、ということである。

 

 そして、ここからが本書の真骨頂だが、この「発達特性」といわれているものは、何とかなり役立つ場面が多し、なのだ。例えば、ASDが顕著な人なら、その分感覚が優れていることが多い。絶対音感のような聴覚の鋭さを持っていることもある。なので、音楽の分野で活躍できる可能性が高い。また、その共感力の少なさからくる圧倒的論理力で、数学を極めて活躍できる人もいる。僕自身共感力は低い。しかし、そのおかげで学問に興味を持ち、今では数学の問題をたくさん解き、本も読んでいる。そして、このような書評も書けるのだ。他にも例としては、本書ではないが、ジェフ・ベゾスの例やイーロン・マスクの例が載っている。彼らが得意なのは、何と数学なのだ。抽象的な思考が得意なASD、という人もいる。僕自身、数学を勉強している。これは知覚統合という分野に関係するのだが、ここから語り始めるときりがないので、また今度の機会に記述する。少し脱線したが、要は「ASDだろうとADHDだろうと、その分かなり得意なことも存在するため、そっちを伸ばしたほうがいいんじゃないの?」ということを述べているのである。

 

 本書を書いた井出正和は、国立リハビリテーションセンター研究所の研究員だ。専門は実験心理学である。立命館大学大学院の心理研究科で博士課程をとっている、心理学の博士である。MRIを使い、感覚過敏や感覚鈍麻についてのメカニズムを研究している。著書に『科学から理解する自閉スペクトラム相の感覚世界』がある。

 

 本書は、ぜひとも、これからの時代を生きる人間として、ぜひ手に取って、読んでほしい。そのくらい、この本は、発達特性についての理解につながる。僕自身、かなり助かった。読めば、特性を持っている人の世界を疑似体験できる。これを機に、ご一読してはいかがだろうか?

 

参考文献

井出正和(2022)『発達障害の人には世界がどう見えるのか』SBクリエイティブ

【書評】とうとう発見!これが内向的な人間の強みだ!『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』

 皆さんが、「内向的」という言葉を聞くと、どのような考えが頭に浮かぶだろうか?「しゃべり下手」?「恥ずかしがりや」?この本は、内向的な人間といわれる人々に光を当てた本だ。僕自身、遺伝子検査や性格検査をやってみると、内向的な人間だという結果がよく出る。それだけ、人付き合いが苦手なのだ。この本は、僕のような内向的で物静かな人間にとって、バイブルだ。思慮深い人が持っている強みを、ずらっと列挙している。僕は、この本に救われた。今回は、この本について、紹介していこう。

 

 まず、僕がこの本で一番注目したのが、「そもそも内向的な人ってどんな人?」という「内向的の定義」だ。そして、このことを話すと、大体の人は口をそろえて「そうなの?全然知らなかった」というのだ。つまり、みんなが考える内向的な人というのは、恥ずかしがり屋で口下手でコミュニケーションがうまくない人を想像する。しかし、この本によると、全然違うのだ。筆者は、「外の世界に対して敏感で、自分の内側に興味がある人」と紹介している。ここがまず面白いところだ。筆者は、この本で、内向的人間の定義から紹介している。そして、「内気」と「内向的」という違いにも着目している。なので、ここでまず皆さんが考えが変わるだろう。

 

 そして第二に、内向的な人の強みを列挙している。私が興味を惹かれたのは、「内向的な人間は、思慮深く、洞察に優れている。そして、創造的だ。」という点だ。僕は、自分が思慮深いだの、洞察に優れているだの、自分自身に言うつもりはない。しかし、この記述を読むと、少し肩の荷が降りたような感覚になった。僕は、人と関わるのが苦手で、何かあるとすぐに考え事を始めてしまう自分にちょっとしたコンプレックスを抱えていたからだ。しかし、この記述を読んでからは、自分は自分でいいんだ、と認められるようになってきたのだ。つまり、このことから、内向的とか外向的とかというのは、コミュニケーションスタイルも含めた単なる違いに過ぎない、問うことが言えるのだ。

 

 著者であるスーザン・ケインは、ライターだ。プリンストン大学を卒業し、ハーバード大学ロースクールを修了後、ウォール街の弁護士になる。ライターになった後は、多数の企業でコミュニケーションや交渉についての講演を行う。TED talkにも出演している。

 

 繰り返すが、この本は、内向的な人間だと自負していたり、コミュニケーションに苦手さを感じている人にはうってつけの本だ。それと同時に、外向的な方々にも、内向的な人間について学べる、良書だ。ぜひ、ご一読してはいかがだろうか?

 

 

参考文献

スーザンケイン(2020)『内向型人間が無理せず幸せになる唯一の方法』古草秀子(訳) 講談社

【書評】何故このタイトルにしたの?『時間は存在しない』

 皆さんは、「時間」という概念をどのようにとらえているだろうか?そもそも、何故僕たちは「時間」を感じるのだろうか?書店に行くと、数々の時間術の本が並んでいる。メンタリストDaiGo氏の本や鈴木祐氏の著書にも、時間術の本がある。その中で、今回紹介する本は、何とイタリアの物理学者が書いた、時間に関する本である。専門書の類に近いが、そこまで専門知識がなくても読める本なので安心してほしい。ビジネスマンが書いた時間術の本より、こちらのほうが、僕としては興味深かった。なぜかというと、この本では僕らが「普遍である」と考える「時間」について、根本敵に考えを変える本だからである。今回の書評では、具体的にどの箇所が面白く、考えがひっくり返るのかを述べていく。

 

 まず第一に、第一部で著者が「時間は普遍なものではなく、ところ変われば時間も変わる」というのを、物理の知識で述べている点が非常に興味深い。僕が特に魅かれたことは、僕たちの言う現在とは、「今いる自分の身の回りで起きていること」であり、遠くの世界の現在は分からない、という点である。分かりやすく言うと、遠くの人と電話している際、「今何してる?」と聞いてから、返事が返ってくるまで、若干のラグがある。僕らからすると、非常に短い時間であるが、僕らが電話で聞いている声というのは、数ミリ秒前の声であり、「現在」ではないのである。これが宇宙規模だったらどうだろう。「光年」という単位がある通り、光の速さで何年かかるか、である。太陽と地球は、光の速さで約8分。つまり、僕らが見ている太陽の光は、8分前の太陽の光、である。なので、現在ではないのである。このような記述を見た僕は、脳天を貫かれたような驚きを感じた。確かにその通りである。このような視点から時間について述べているのは、あまりないだろう。また、アインシュタイン相対性理論を分かりやすく説明している部分も、かなり面白い。

 

 そして、最も面白いのが「僕ら人間は、どのように未来と過去を区別しているのか」という箇所だ。ここは、僕も考えもしなかったところだ。この書評をお読みの皆さんにも一度考えてほしい。どのように、僕ら人間は過去と未来を区別しているのだろう?実は、僕ら人間は、出来事に対して「ぼやかす」ことによって過去と未来を区別しているのだ。つまり、「ここから先は過去で、ここから先は未来だ」という、実にあいまいな線引きによて、区別しているのである。皆さんにも心当たりはないだろうか?どのような基準で過去と未来を区別してるのか?聞かれると、僕は答えられない。また、これに加え、出来事に関するもう一つの事実を、著者は提示している。「過去」には変数がほとんどなく、「未来」は変数が非常に多くかなり乱雑となっている、という事実だ。言われてみれば、僕らが「過去」を考えるとき、時系列立てて振り返る。つまり、一定の規則性があるのだ。一方、僕らが未来に関して考えるときはどうだろう?よく、「何が起こるかわからない」という言葉を聞かないだろうか?つまり、「未来には規則性がなく、特殊な配置、規則性というものがまるでない」のだ。言い換えれば、僕らは、「どのくらい規則性があるか」で、過去と未来を区別しているのだ。そして、この規則性の見つけ方は、人それぞれ、十人十色である。だから、遅刻する人も多くいる、という考察を導き出すこともできるのだ。

 

 著者は、イタリアの理論物理学者であるカルロ・ロヴェッリである。現在は、フランスにある大学で研究チームを率いている。理論物理学者としては異例のベストセラー作家であり、著書に『世界は関係でできている』『すごい物理学講義』などがある。専門は「ループ量子重力理論」である。

 

 この本は、物理学者が書いただけあって、「難しい」と毛嫌いする人もいるかもしれない。しかし、食わず嫌いせずに、ご一読いただきたい。難しいなら、じっくりゆっくり読むのも、読書の楽しみだ。そのくらい、この本は、好奇心が収まらない本である。事実、僕もこの本を読んでから、数学の問題をもっと解いて、物理に進もう、なんて思ったくらいである。ちなみに、一個だけ数式が出てくるが、その時筆者は「この本に数式を持ち込んだことをお許しいただきたい」と書いている。

 

参考文献

カルロ・ロヴェッリ(2019~2021)『時間は存在しない』冨永星(訳) NHK出版

【書評】人々の医療はこのように進化していくのかもしれません『不老不死の研究』

この本は、帯にもある通り、「健康本」である。と、言いたいところだが、実は、そこら辺にあるような単純な「健康本」ではない。勿論、健康に欠かせない「食事、運動」などの生活習慣について書かれている。しかし、それ以上のことにも触れている。それは、「難病治療や介護、救急医療のための新技術」である。一見SFと言われるようなことを部分的に研究し、実用化している例も載せてある、言わば「最新テクノロジー本」でもあるのだ。研究段階にあることをここまで載せている本は、他に見た事がない。「今世界はこういう所を目指しているのか」を知ることができる本だ。

 


僕が、最も「面白いな!」と思ったのが、「人工冬眠」の話である。この本で興味深いのは、人工冬眠のテーマをNetflixの映画を紹介する形で始まり、そこから人工冬眠の研究について書いている点だ。そして、その中で僕の驚いた点は、「冬眠は神経細胞群であるQニューロンが大きく関わっている」「3週間飲まず食わず、心肺停止の状態で見つかったにもかかわらず生還した男性の話」だ。これを、冬眠状態と結びつけている点が、実に興味深い。僕も、これを読んでいて、様々な疑問が湧いてきた。と同時に、とてもワクワクを感じた。

 


他にも、世界初である装着型サイボーグ「HAL」の記述に興味を惹かれた。そもそも、僕自身「装着型サイボーグ」を初めて聞いた。この話では、最初に研究している教授について紹介し、その後、「HAL」を使ってどのように貢献したいのか、を書いている。そして、その後、難病の治療へのHALの活用論や、高齢者への装着、介護への実用化例へと話を進めている。難病や介護など、24歳の僕にしては、まだピンとは来ないが、もし母親が、筋力が衰えて要介護に近い状態になったら、と考えると、やはり他人事ではない。そのような点から、このHALの話は、非常に面白い。これから必要なテクノロジーになってくるだろう。

 


著者である堀江貴文さんは、かなり幅広い活動をしている。著書は多数で、HIUやゼロ高を主宰し、菅元首相や高橋洋一さんなどを始めとしたインタビューをしている。本書の他に『有り金は全部使え』『全ての教育は洗脳である』などを書いた。

 


この本は、特に若い人に読んで欲しい。僕も24歳だが、今寝たきりになっている人を見ると、「自分はいつまでも元気に動きたい」と思う。そのために、毎日の運動や瞑想、食事管理、睡眠など、体作り&メンテナンスをしている。他にもこの本には、テストステロンや生活習慣病についての記述もあるので、タバコやお酒を飲んでいる人は、是非教科書として読んでいただきたい。

 


参考文献

堀江貴文・予防医療普及協会(2022)『不老不死の研究』幻冬舎